デジタルソーシャルイノベーションが民主主義に力を与える/Audrey Tang

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はじめての記事。こんなブログです。

 

手作業や畑仕事をしながら、そのときに気に入っている英語の動画を聞き流すのがもっとも好きな時間です。

 

ときどき、ものすごく感激して何回も聞き、誰かにシェアしたくなるものに当たります。

日本語のブログや動画を簡単にシェアするように、これをぽちっとシェアできたら、ここに詰まっている実質的な知恵や情報について、出会った喜びを共鳴し合える人たちがいそうな気がするのに、話を深められる人たちがいそうなのに、と思って残念になります。

 

そんな話の中で、「あなたが訳したらいいじゃない」と何回か言われて、ふとやってみようかと思いました。そして、時間を見つけては、ほんとうに少しずつ、コツコツ訳し始めました。

 

1.youtubeの、文字起こし機能を使って自動生成の英語を取り出す。

2.自動生成英語の(気付く限りの)あきらかな間違いを直す。

3.パラグラフごとにGoogle翻訳につっこむ

4.Google翻訳のあきらかな間違いを修正

5.自動翻訳の文章では硬いとかわかりづらいとかいう箇所について重点的に、何回も再び動画の音声を聞きながら意をくむ努力をして、なるべくそれの伝わりやすいような自然な日本語を必死で探す。

 

という段階を踏んでいます。youtube動画は協力要請がされている場合以外有志が勝手に字幕をつけることはできませんし、仮に協力要請がされているものでも、多くの人がみる動画の字幕はやはりプロの方でなければと思います。

 

なので、もともと見やすい動画であるものを、このような長々しい文章と写真、という形式でお届けすることしかできません。残念ですが、TED talkのようにメジャーなものは、いつか日本語字幕付きの動画がでる可能性もあり、こういう注目がそこにつながらないかな~、というかすかな期待も込めています。(そのときには、自分の訳の質について赤面することになりますが、、、)

 

あくまで、プロではなく素人が、理解したい、シェアしたい、という思いから自分の勉強のためにつけた訳です。ご覧になって、あきらかな誤訳を発見された方がおられたら、ご連絡いただければ大変ありがたいです。すぐに訂正します。

 

第一号は、台湾のIT担当大臣の唐鳳/Audrey Tangさん

唐鳳 - Wikipedia

記念すべき最初の記事は、台湾のIT担当大臣の唐鳳/Audrey Tangさん2019年のTed talk。

 

www.youtube.com

 

 

これを最初に聞いたときの、感激は忘れられません。聞きながら、「うぉ~~~~」って何回も叫んでいたと思います。

 

自分の国の政府や政治をなげくのではなく、こういう人が同時代に同じ世界に生きて、社会変革をしていっている、そのことに一緒にわくわくしたい。世界はこれまでになくつながっているので、どこかで良いことが起きれば必ずそれが影響する。彼女のシェアしてくれているものを、実質的にシェアできる人たちがいたらうれしい、という思い。

 

特に、この中に登場するPol.is(ポーリス)というテクノロジーとその精神性にものすごく共鳴していて、これをシェアできたら、日本で直接間接につながっている誰かの中にこのオープンソースを活用できる、あるいはこれに似たものを知っている、つくれる、ということがないだろうか、という思い。

 

それが翻訳作業を支えたモチベーションです。

私自身の思いについては後述しますので、そこまで関心をもって、約17分半のスピーチの長い長い文章を私のつたない訳で読んでくださった方とは、あとでもう一度お会いできればと思います。

何カ所か、自動生成に確信がもてない、けれどどうしても聞き取れず、で、大意が伝わればとわからないまま訳しているところもあります。ご了承の上読んでください。



デジタルソーシャルイノベーションが民主主義に力を与える   

  •  私のオフィス 

私は、いま、デモクラシーを前進させることに取り組んでいる多くの人々が好きです。

私は楽観主義者なんです。

この変な状況は、私が15歳のときに始まりました。 1996年のことです。

  私は、人類の知識の未来はウェブ上にある、私の教科書はすべてもう古いということに気が付きました。 そこで、学校を辞めてウェブの世界で学び始めたいと、教師たちに伝えたんです。

驚いたことに、教師たちはみな同意してくれました。

その1年後に私は、Webテクノロジーの最初のスタートアップを設立しました。 

そして、クレイジーなアイデアで動いている、この素晴らしいインターネットコミュニティと出会いました。そのアイデアというのは、オープンなマルチステークホルダーという仕組みです。今日もインターネットを動かしているのはその力です。

 

いま私は、台湾初のデジタル大臣として、15歳の時に学んだことを実際に生かしています。

それは、徹底的な透明性、市民参加、そして、おおまかなコンセンサス、ということです。そしてそれらが驚くほどに機能し、社会を変革しています。



私のオフィスを見てください。これ、ほんとうに私のオフィスです。私はテレワーキングをしている大臣なので、ここを含め、地球上のどこでも仕事ができます。でもこのオフィスは特別です。

 私は毎週水曜日の午前10時から午後10時まで、ここで人々に会います。 それが私の勤務時間です。

誰でもここに来て私と話すことができます。ただし、会話がネット上に投稿されることを承知する限りです。それが『徹底的な透明性』です。

 このスペース自体が、100人以上の社会的イノベーターの共同クリエーションです。

例えば、トリソミー症候群(ダウン症)の人々と仕事しているデザイナーチームが、「彼らは私たちとずいぶんちがう幾何学的レンズで世界を見ています。彼らのアートワークを現実のものにして、パブリックインスタレーションとしてここに置きませんか?」と言ってきます。

そして、たとえばこのサッカー場のように、水曜日に私と話をすることで、このスペースにクリエイティブな精神を吹き込みどんどんおもしろくしていくことができます。

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私たちのところに来るのは人間の訪問者だけではありません。 この自動運転ロボットの訪問者は、これまで3回、毎回ひと月程度来ています。

これは、MIT Media Labからやってきた自動運転の三輪車です。

この乗り物の素晴らしいところは、とにかくスローなことです。

建物や人にぶつかっても、大丈夫、誰も傷つけません。

もうひとつの素晴らしさは、オープンソースとオープンハードウェアであるということです。つまり、コンピュータープログラミングまたはハードウェアの知識がある人ならだれでも、社会が望むようにこれをいじることができます。

 

たとえば、これには最初、真ん中に赤い目が一つあるだけでした。人々はそれを見て、ギリシャ神話のサイクロプスみたいであまり親近感がないので、目を二つにして、ウインクしたり瞬きしたりするように変えました。そのほうが社会により溶け込みます。このようにして私たちは、テクノロジーに社会を支配させるのではなく、AIがどう人間とともに生きるのか、その規範を見出していきます。

 私たちは、 技術者と共働して社会変革をしています。

  • ソーシャルイノベーションを可能にする新しい規制のあり方~サンドボックスシステム

これは、私たちの大統領ツァイ・インウェン氏が、2年半前の大統領就任式で述べたことに呼応しています。

彼女はこのように言いました。

『これまで民主主義は、対立する2つの価値の間のぶつかり合いと見なされてきました。しかしこれからの民主主義は、多くの多様な価値の間の会話にならなければなりません。』

 

確かに、これまでの考え方では、政府というのは、たとえば経済発展vs環境保護のような異なる勢力の間でひっぱられて張りつめているロープのようなものでした。各大臣が結び目みたいなものですね。

 

しかし、今ではソーシャルイノベーションと呼ばれる新しい考え方があります。

ソーシャルイノベーションでは、環境保護について社会が目指すゴールにより近づいていくようなビジネスモデルを開発できます。

  政府の役割は変わったのです。何が公正で、ベストな仲裁策か、ということを問うかわりに、2つの新しい質問をします。

第一に、さまざまな立場がある中で、誰もが受け入れられるような、共通の価値はなんでしょうか?

 第二に、 その共通の価値を、すべての人に提供するイノベーションを考えられるでしょうか?

 

実際、台湾では、規制政策を作るための多くの斬新なツールを使っていて、それがソーシャルイノベーションを可能にしています。たとえば、サンドボックスシステムというものがあります。

サンドボックス(砂場)ってなんでしょう?

それは、基本的にこのようなものです。

イノベーターが私たちのところに来て、非常におもしろい、新しいアイデアがあるといいいます。それは例えば、プラットフォームエコノミーとか、FinTechとか、自動運転車とか、何でもいいです。

 そしてイノベーターは、政府の規制は時代遅れだと言います。

 

規制当局はここでイノベーターと戦ったりせず、次のように言います。

「OK、あなたがたに1年を与えます。この一年間、あなたがたが提案する新しい規制の方法を試しに実行することに同意します。規制の別バージョンのお試しです。そうすれば、社会全体がこの素晴らしい新しいアイデアを実際に知ることになります。そしてお試しの一年が終わるころには、たとえばハイブリッドモデルの交通機関、自動運転車などをみんなが見て、実際に社会に有益であるかどうかを一緒に判断することができます。

 

 そして、それがうまく機能するとなった場合、イノベーターの考えた別バージョンの規制が、実際の規制になるわけです。

 

うまくいかなかった場合は、オープンイノベーションですからね。みんなのために授業料を払ってくれた投資家に感謝して、新しいイノベーターが入ります。彼らは、前のイノベーターが中断したところから始めることができます。

 

そして、議会のメンバーが新しい法律を作ろう、ということになったとき、そのイノベーターは、最大で4年間、基本的に独占権を与えられます。

そして、議会がこのことを十分に理解し、法律が定まるときには、もちろん競合他社が市場に参入するでしょう。

 

  • テクノロジーが、人々と政府の距離を縮める

さて、実際にどうやって私たちは、地域社会のニーズをみつけると思いますか?

  さらには、先住民、農村、離島のニーズがどこにあるのかを、どのようにして発見するのでしょうか?

 

私は毎週火曜日に台湾中をまわります。

水曜日に私たちの首都である台北に人々はやってきます。火曜日に私は台湾中を旅行します。

台湾のすばらしいところは、ブロードバンドが基本的人権であることです。 台湾のどこでも、1秒あたり10メガビットのインターネット帯域幅がない場合、それは私の落ち度ですから私に言ってください(笑)。

また、4Gのデータ通信は、誰でも1か月20ユーロ未満で利用できます。これによって、台湾のどこにいても、台北ソーシャルイノベーションラボ(Tangさんのオフィス)と高速双方向ビデオ会議をセットアップできます。

 そして私は 地元の起業家や、NGO、協同組合などと話をします。

 

こうして地域の社会問題がどんなものか把握し、その一方で、12の省庁から人々がソーシャルイノベーションラボに集まり、地元の人々とのビデオ会議で目と目を合わせます。

これは以前の方法より優れています。経済省がまず話を聞いて、厚生省に相談する必要があるといい、その厚生省は内務省に相談する必要があるという。3回たらいまわしになった後、元の状況が何だったかを本当に覚えている人はいません。ただのパワーポイント資料になってしまう。

でもこの方法だと、内務大臣がすぐ隣に座っているので、「内務省に相談しなければ」といってパスすることはできません。実際にその場でブレーンストーミングを行い、社会的ニーズを満たす方法を見つけ出す必要があります。

 

 自動運転車やグリーンエネルギーなど、新しい技術の公開デモンストレーションは、みなショールングリーンシティというところで行われます。それは高速鉄道駅の近くです。

台湾のもう1つの素晴らしい点は、高速鉄道で最北から最南の都市までわずか1時間30分の距離にあることです。そのため、私たちは人口2,300万人ですが、実際にはとても緊密なコミュニティです。

だから、誰もが高速鉄道に飛び乗って、まるで動物園に行くみたいに、自動運転車を見に行き、自ら試してみる機会を持つことができます。

 

  • 立場を超えて協議するシステム~Pol.is

さて、ある新しいテクノロジーが社会にとって受け入れ可能かどうか、それに関するお互いの気持ちをくむことができるように、みんなで協議をします、といったら、実際どういうことだと思いますか?

 

私たちはいつも、AIの管理による話し合いを実施します。これはPol.is(ポーリス)と呼ばれ、自動運転車と同じで、誰でも好きなように修正できるオープンソースツールです。

そしてこれは、台湾が2015年に最初にuberの問題を扱って調整した時の、協議のマップです。

 ここであなたは、意見キャンバスの地図上に、異なる位置にいる何千人もの人々を見ることができます、そして、あなたは青いアバターで、真ん中にいます。

ある特定の問題について、友人や家族がどう考えているかをここで見ることができます。彼らはこの地図上にちらばっています。

 

このような協議を実行するときは、集中会話法を使用します。まずすべての人にデータを要求します。

台湾では、オープンデータと言うとき、オープンな政府データを意味するだけでなく、オープンな市民データも意味します。誰でも、みんなが熟考するために、事実に基づくデータを提供できます。

そして、なかなかおもしろい方法だと思いますが、同じデータに対して、人々が気持ちを表すのに一か月の時間をかけます。ある同じ事実について、あなたはハッピーかもしれないし、私は怒りを感じるかもしれない。それでいいのです。すべてOKです。

アイデアを形にするのは、お互いの気持ちにチェックインしたあと、一ヶ月の時間をかけてからです。そのころまでには、ベストのアイデアは、ほとんどの人の気持ちを大事にするものであると言うことができます。一度おおまかな合意を得られたなら、 その合意をもって、新しい法律や新しい規制に移行します。

そのため、人々のアバターの相互作用の設計にはとても多くの注意を払います。

たとえば、自動運転車のケースでは、あなたは仲間の市民に対して一つの声明、一つの感情を見ることができ、それに同意または反対することができます。 あなたが同意するかどうかに応じて、あなたのアバターは、あなたに近い感じ方の人々のほうに移動します。

 

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 しかし、他の多くのオンラインフォーラムにはあって、ここにはないものがあります。それは、返信ボタンです。

私たちは、返信ボタンがないところにはトロール(”荒らし”、中傷や攻撃を書き込んで場を荒らす人を表すネット用語)は寄り付かなくなることを発見しました。

トロールは、返信ボタンがあると勢いづきます。意見ではなく、人を攻撃できるからです。

でも、返信ボタンがないと、同意できないことに対しては『反対』をクリックする以外できることはありません。もちろん、他の人が共感できるような対案を出すことはできます。

さて、1か月ほどこのような協議を続けると、キャンバス上に現れる形はいつもこのようになります。これは、おそらく今日の全体のなかで最も重要なスライドです。

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主要メディアやいくつかのソーシャルメディアだけを見ると、人々はしばしば、社会は2匹の犬がロープを引っ張り合うように分断されているという印象をもちますよね?

 

メディアは最も分裂しているものに焦点を当てます。

しかし、Pol.is(ポーリス)を使うとはっきりわかります。

ほとんどの人が、ほとんどの場合、ほとんどの隣人と、ほとんどのことに、同意しているのです。

そういうことが、ソーシャルメディアや人気メディア上の、いつもの議論では中心にならない、というだけなのです。

人々が実のところ持っていた大まかなコンセンサスの反映をこうして示すことによって、それらをもとに最初の規制を作ることができます、なぜなら、もうそれが一つの基準になっているからです。

そして、このように分断しがちな問題について、最初の規制から実際の法が制定されるまでさらにもう1年かそこら、みんながそれについて直接経験する、という実験期間をもつことができるのです。決定がなされるのはそのあとです。

これが、私たちがソーシャルイノベーションを実現していく方法です。人々のコンセンサスを、目に見える形にするのです。 

  • 情報を人々と共有する~”影政府”GOV.zeroプロジェクト

政府や規制システムの別バージョン、と言ったとき、もうひとつの例があります。それは、台湾の、いえ、台湾のというより、台湾から始まって世界中に広がった、最大の民間テクノロジーコミュニティで、Govzeroまたはg0vと呼ばれます。

それは本当にシンプルなアイデアから始まりました。

台湾の政府のウェブサイトはすべてgov.twで終わりますが、このドメイン名はg0(ゼロ)v.twです。公共サービスのそれぞれについて、人々が好きではないとか、あまりにも退屈だとか、何かがかけているとか感じるものがあった場合、なんで誰もそれをやらないんだ!と責めるのではなく、ならば自分たちがやろう、というのがg0vゼロのモットーです。

台湾のすべての公共サービスWebサイトでgov.twの、oをゼロに変更すると、シャドー(影)政府Webサイトにアクセスします。シャドウウェブサイトは、双方向に作用する、オープンソースなもので、公共サービスの新しいビジョンを提供します。

2012年、最初のg0vゼロプロジェクトは、国家予算の視覚化でした。

 以前は、台湾の国家予算は500ページのPDFであり、誰もそれを通しで読みたいとは思いませんでした。

しかし、g0vゼロは、それを作り変えて、ユーザーが関心のある特定の予算項目にいき、それについてのリアルタイムの会話を掘り下げることができるような、双方向のマップを作成しました。

私がデジタル大臣になった後、もちろんこのイノベーションを政府に融合させました。ですから、台湾の電子参加プラットフォームには人口2300万人のうち500万人が参加しています。そこでは、何千もの閣僚プロジェクト、すべての調達重要業績評価指標などを見ることができます。

 誰でもコメントすることができ、公職のキャリアが議員やジャーナリストの仲介なしに直接あなたに応答するので、行政に対する市民の概観効果を可能にします。

 

g0vゼロの最近の例ではもうひとつ、このエアボックスの実験があります。

台湾では人々は、たとえばPM 2.5など、大気の状態を気にかけています。

そのため、約2,000人がエアボックスと呼ばれる小さなデバイス(IOTデバイス)を個別に購入し、学校のバルコニーやいろんなところに置いて、100ユーロ未満のコストで大気の質を測定しています。

 

人々はそれを分散型台帳またはブロックチェーンに公開するので、お互いの数字が改ざんされないという安心がありますし、市民の貢献によって政府は突然多くの情報をみることができるようになります。

 

もちろん、エアボックスシステムはオープンソースであるため、台湾に限らず世界中のどこでもダウンロードして使うことができます。

そして、台湾の民主主義の素晴らしいところは、このような、政府の権威をおびやかすような市民の技術プロジェクトを見たときに、それをやっつけるのではなく、協力することです。マップのどこが欠けているか体系的にみていって、工業団地や、 ペスカドール諸島の上など、市民がそこにも設置すべきと思いながらも、なかなか置けない場所にエアボックスを設置します。

 

  • 大統領ハッカソン、そして私の職務

毎年私たちは、集合知能システム、環境データシステムに基づいて、大統領ハッカソンを実施しています。

 

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大統領ハッカソンでは、誰でもアイデアを提案できます。

 毎年何百ものアイデアが提案され、それぞれのアイデアが、データサイエンティスト、ドメインエキスパート、公務員からなる三者合同チームにシャッフルされます。

それぞれの三者合同チームは、3か月の共同作成プロセスの終わりまでに、大統領に対してプレゼンをします。

毎年五つのチームが賞を獲得しますが、賞金はありません。彼らは大統領自身からのトロフィーを望んでおり、そのトロフィーとはプロジェクターです。プロジェクターをオンにすると、トロフィーを手渡す大統領自身の画像が投影されます。省庁や機関を超えたコミュニケーションにとって、これはとっても効果があります。そして、概念実証が(アイデアが実現可能かどうかの検証)が何であれ、次の年度には、政府がこのアイデアを公共サービスとして実施することを大統領が約束します。つまり影響が最大になるということです。

ですから、これは台湾が国連のSDGsのうちの1つか2つのみならず、特に17番目の目標に貢献する方法なのです。 つまり、信頼性の高いデータを構築するということです。そうした共通のデータと事実によって、パートナーシップを築くときのお互いの信頼が得られます。そして、オープンイノベーションによって、すべての人のより良い未来のために、実際に物事が届けられるようになるのです。

 

最後に、私が大臣になった当初に、私の職務内容の説明として書いたものを読みたいと思います。このようなものです。 

 

When we see Internet of Things,  let's make it a Internet of beings.

When we see virtual reality let's make it a shared reality.

When we see machine learning let's make it collaborative learning.

with the user experience let's make it about human experience.

And whenever we hear that a singularity is near,let us always remember the plurality is here.

(このJob descriptionは、一遍の美しい詩なので、良い訳をつけることは自分の能力を超えていると思い、原文をそのままのせます。

言葉の意味に広がりや深みがあり、英語だと韻を踏んだり対になったりしているものが、自分が日本語をあてていくと限定されたり壊れたりしてしまうのです。

 

以下は、すぐ意味を取りたい人の参考に、ざっくりした解釈のひとつのバージョンをのせたにすぎないことをご承知ください。singularity、と plurality だけは、限定したくなかったので、そのまま使いました。どうぞ調べてください。)

 

 

インターネットを「物」とみるとき、「人間の存在の集まり」、としよう。

「仮想現実」とみるとき、共有している現実、としよう。

「機械学習」というとき、共同学習、としよう。

ユーザーエクスペリエンス、を、人間のエクスぺリエンスにしよう。

そして、 singularity(技術特異点)が近いと聞いたらいつも、pluralityがここにあるのだ、と思い出そう。

 

どうもありがとうございます。

 

・Pol.isのテクノロジーと、非暴力コミュニケーション(NVC)

 

いかがでしたでしょうか?

このTED talkは、彼女のさまざまな試みや業績のインデックスのようなもので、ひとつひとつのことの背景に語りつくせない労力の物語があるのを想像できます。

 

彼女がほぼ同じ内容を、アメリカの”Iinternational security and diplomacy at the Asia Society Policy Institute “という場で語り、そのあと丁寧な質疑応答がある1時間余りの動画もあるのですが(写真の何枚かはそちらからです。TED動画はずっと似た絵なので)、

https://www.youtube.com/watch?v=GVXIpWamVLc&t=4098s

 

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それを聞くと、たとえば、

 

「徹底的な透明性のために、会話をすべてネット上に公開する」、とここではさらっと紹介されていることに関連して、その透明性と、個人の尊厳やプライバシー、セキュリティの問題を両立させるために、どれほどの労力と工夫がなされているか、といったことや、

 

中傷的な書き込みに対して、最初から魔法のようにテクノロジーでシャットできたわけではなくて、長い苦労の歴史があり、多くの市民の意志と協力があって今の建設的な市民参加が実現されているということ、

 

などがわかります。


その中でも、私がもっとも関心をもっているのが、冒頭にも書いた、Pol.isというテクノロジーです。

なぜ強い関心があるかというと、これが、近年自分が必要性から学び始めた、非暴力コミュニケーション(NVC)のプロセスと多くの共通点がある、というか、ほぼ同じことをちがうアプローチで実行しているものだと思ったからです。

Pol.is

1.まず事実のデータを広く集めて示し、

2.それに対するお互いの感情にチェックインして見て行くことに十分な時間をかけ

3.多くの人が共有できる価値がなにか、ということが見えて来たら

4.具体的なアイデアを形にする

 

NVC

1.相手に対して、解釈や評価をなるべく抜いた事実の観察をする

2.それに対する自分の感情や気持ち→相手の感情や気持ちを、十分時間をかけて扱う

3.その感情の奥にある、ほとんどの人が共有している人間的ニーズのレベルに降りる

4.1~3によって共感が形成されたら、具体的な解決方法はおのずと見える

 

これ、同じプロセスですよね。

 

ヒエラルキーのない(つまり誰かの号令でことを決めるのではない)、平らで民主的な関係を大事にしながら、さまざまなちがう価値観をもった人たちの間の共感/合意を形成していくということ。

 

夫婦や親子のような一対一の関係でも、広く社会的なものでも、そこにある困難は同じものです。これを、パワーではなく本当に対等/民主的な関係を保って見出していくのは、理屈を言うのは簡単だけれど、実際には困難で根気のいる長い道のりだと実感しています。

 

人と人との関係も、民主主義も、ずっとその理念の実現への途上にあって、希望を捨てない人たちの間に少しづつ、でも確実に見出されていくものだろうと思っています。

 

NVCのアプローチは、個人個人がこの4つの段階を人間関係の中で実現していくために必要な学びを重ねて深めていくこと。

 

Pol.isは、参加する市民ひとりひとりにそうした努力を求めるのではなく、できるだけ多くの人が参加し、細心の注意を払って設計されたニュートラルなテクノロジーを介することによって、集合知能的にこれを実現しようとしているように感じ。

 

となりの人の意見やふるまいをみると人間はすぐ解釈や評価をして何か言いたくなってしまい、じきに対立が生まれてくるけれど、実は多くの人が共通のニーズを持っている。

 

学びを深めた個人が、それは間に入る人でも当事者でもいいのですが、その共通の土壌まで降りていって、共感を人々の間にもたらすのか、

 

テクノロジーによって(イメージとしては)ぐ~っと人々の集まっている地上から視点を上昇させていって、実は同じところにみんな立ってますよ、ということを画像としてみせるのか。

 

どちらがよいとかじゃなくて、より有効な場面がそれぞれあるということかなと思います。両方が大変貴重で意味のあるアプローチ。

 

少人数で二者間の深い精神的な問題の解決であれば、やはり多くの人が、人間にそこに入ってほしいと思うだろうし(そここそ人間じゃない方がいい、という考え方もだんだん増えそうな気もするけど、そっちにはいま分け入らない)、

 

多数の多様なステークホルダーの間で共有できる価値を見出していきたいときはこのPol.isのようなAI介在の協議が有効でしょう。

 

いずれにしても、ここで共通して目指されているのは、デモクラティックな、対等な地平での、それを土台として持続的に前進できるような合意/共感(妥協や痛み分け、という落としどころはやがてくずれる)。

 

それを形成することを具体的に真剣に目指すプロセスには、普遍的なものがあるんだなと。

 

もし、NVCを知らずにこのPol.isの話を聞いて画像を見ても、「ただ無機的にテクノロジーで、集団のプレッシャーを形成して少数派をばっさり切り捨てているだけ」という見方をしたかもしれないなと思います。

 

Audreyさんの最後の詩にもあったけれど、テクノロジーっていうのは無機的な機械じゃないんですよね。それって、野菜をただの「物」とみて、生産者の存在を想像できないのと基本的には同じ、誰しも縁のない分野には想像力が働きにくいけど、そこには人が必ずいるんですよね。

 

たとえばこのPol.isのようなテクノロジーを開発した人たち、それを実際の社会問題のために注意深く改良して運用する人たちが、何を目指し、どういう困難があるのか、いまこれを見ると想像できる気がします。

 

2300万人もの人々相手の大臣であるAudreyさんが、これほど丁寧にひとりひとりの気持ちを拾おうとしている。

 

ういう基本的な姿勢がある以上、決して少数派の意見をただなきものとしているわけはなく、きめ細かく繰り返し拾い上げて行くシステムを構築しようとしていることが、ほかの動画などからも伺えます。

 

彼女が冒頭に言っているように、optimist(楽観主義者)だからこそだと思う。

 

ただの脳天気じゃない、事実を客観的に見た上で、この状況のどこにどのように、具体的な希望が見いだせるのか、という視点を維持し続ける。

 

それがほんとうの楽観主義者で、そういう人が自分の日常にもたらすポジティブな影響は大きいです。

 

私はこれを見た後、実は自分がおもしろそうだから使ってみたい! と思って、Pol.isに問合せメールを送りました。

たとえば、自分がスタッフをしている小さなデモクラティックスクールの合意形成でも、子どもたちがデモクラティックな合意形成をゲームのように学ぶおもしろいツールになるんじゃないかとか、自分の関連するもう少し広いコミュニティの中で、可視化された協議ができないかなとか、そういうアイデアでした。

 

でも、フリーで公開されているオープンソースの部分は、とても素人にどうにかできるものではなかったです( ;∀;)

 

これを読んで、プログラミング言語がわかって興味が出た方はぜひ見てみてください。コミュニティの成員一人一人の感情を大事にする合意形成のテクノロジーは、これからますます重要性をまして行くものだと思います。

https://pol.is/home

サポート付きでサービスを使うには、ひと月十数万のコストがかかることがわかり、自分には手が届かないので( ;∀;)あきらめました。

 

それでも、国とか自治体とか企業とかからしたら安いコストですよね。これを活用してできることを思うと、コストパフォーマンスはものすごくいいと思われます。こんなの活用している自治体があったら、市民も楽しいし、話題になることまちがいなしだよな〜。

 

こういう合意形成のテクノロジーが、誰にとっても身近なものになったら、いろんな場面で理解や共感が進む助けになるだろうな~、まず第一に、おもしろいだろうな〜と夢想します。案外近い将来にそうなるような気もします。

 

今は、地道にNVCの学びを深めていくことだと思っています。それも楽しい道なので(^^)/


とても長い長いコンテンツをここまで読んでくださった方々ありがとうございます。


能力と時間から言って、ひと月に一本より遅いペースになろうかと思いますが、これ、自分でも楽しいので地道に重ねていこうと思います。

 

  • 有言実行のための次回予告

 

実は次回に訳したい人はもう決まっています。

アメリカのユング心理学者&ダイアローグセラピーの開発者で、仏教徒でもある

Dr. Polly Young-Eisendrathさん。私はTED talkで出会いましたが、日本語で彼女の情報について紹介されたものをネット上に見つけることができません。

 

https://www.youtube.com/watch?v=WJcY29pX0vo&t=2960s

 

これは長い講演動画なので、部分的に切り取りながらになると思います。

20世紀に急激に内容が変化して、誰もがそのシフトの中で、戸惑いと困難を経験している夫婦/パートナーの関係。

 

以前は当たり前だったヒエラルキーや社会的な役割が急速に変化して、みんなが対等に、自分個人の価値感をパートナーとのつながりに追い求めるようになったからこそ、新しく生まれてきた困難な課題と希望について語られています。

 

まったくちがうものを扱っているようでいながら、今回の記事と地続きのテーマがあって、自分にとって大事なものなんだろうな~と感じています。

 

いつになるかわかりませんが、どうぞ次回をお楽しみに、、、。